【生産者インタビュー】テュヌヴァン
テュヌヴァン社の輸出部長キャロリーヌ・モラ氏(以下キャロリーヌさん)が来日した際、試飲会前にインタビューの時間をいただきました。
キャロリーヌさんは留学していた日本から2000年にボルドーのサンテミリオンに移住し現在に至るまでの23年間テュヌヴァン社に勤めており、テュヌヴァン社のワインに誇りと情熱を持ってワインの素晴らしさを伝え続けています。
今回は、サンテミリオンのガレージワインの先駆者として駆け上がったテュヌヴァン社のオーナーのジャン・リュック・テュヌヴァン氏、そしてテュヌヴァン社の現在を伺いました。
ヴァランドローの新しい醸造所
シャトー・ヴァランドローは、ジャン・リュック・テュヌヴァン氏がサンテミリオンで手掛ける伝説的なシンデレラワインです。
初ヴィンテージの1991年以来、ワインは高く評価され続け、驚くべき速さでトップワインの1つに名を連ねました。
2012年にサンテミリオンのプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに昇格したヴァランドローは、現在もその歩みは留まるところを知りません。
もともと醸造所のあったサンテティエンヌ・ド・リッセの丘に、2019年からたった2年で環境に配慮した自然に優しいワイン造りを目指し、新しい醸造所を完成させました。
植わっていたカベルネ・ソーヴィニヨンを引き抜き、大きな穴を掘って醸造所は造られたそう。
収穫時にブドウを運び込むため広いスペースを持つスタイリッシュなガレージ、その地下にはステンレスタンクが配置されており、グラヴィティー・フローを導入しています。
空気も自然に循環し、夏も冬も温度・湿度ともに安定するよう設計されており、また、ソーラーパネルを設置することで消費電力の何倍ものエネルギーを生み出すことに成功しています。
ヴィルジニー・ド・ヴァランドロー
ヴァランドローの素晴らしさはご存知の方も多いと思いますが、そのセカンドラベルとして生まれたヴィルジニー・ド・ヴァランドローをご存知でしょうか。
当初はヴァランドローのセカンドラベルとして生産され始めましたが、1997年以降、独自のアイデンティティーを持つワインとして位置づけが変わり、生産されています。
ヴァランドローでは醸造所周辺の畑のブドウしか使用出来ないため、買い増してきたサンテミリオンの畑の一部をヴィルジニー・ド・ヴァランドローの畑として、ヴァランドローのチームが栽培から瓶詰まできめ細かく目配りし、ヴァランドローと同じ方法で生産しています。
まさに、コストパフォーマンスに優れたワインだと言えます。
「ヴィルジニー」はテュヌヴァン社夫妻の一人娘の名前から名付けられました。今ではワイナリーから離れてしまっていますが、思い入れもあるため名前は大切に残しているそうです。
「ミネラリティー」豊かな白ワインも必飲
テュヌヴァン社ではヴァランドロー・ブランとヴィルジニー・ド・ブランという2種類の白ワインも生産しています。
2000年にソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、セミヨンを植樹し、2003年がファーストヴィンテージとのこと。
年々ブドウ樹の樹齢も上がってきているため、2015年以降特に素晴らしい状態になってきたそうです。
たった3haしかない畑できめ細やかな作業も必要で手間もかかりますが、テュヌヴァン氏は「普通のボルドーワインではなく、もっと素晴らしい白ワインを造りたい」という熱い思いからコンサルタントにブルゴーニュのコント・ラフォンにいた人物を呼び寄せ、ミネラリティー、複雑味、フレッシュ感のある白ワインを生み出しています。
ヴィルジニー・ド・ヴァランドロー(白)は都内某有名ホテルでも提供されています。
味わいと価格を考えるととてもお買い得ですし、お刺身やお野菜、白身のお肉料理など幅広く合わせることができる万能な白ワインだと思います。
ヴァランドローがお好きな方はもちろん、ボルドーの白ワインがお好きな方、またブルゴーニュのシャルドネがお好きな方にも一度試していただきたい1本です。
ファンテジー・ド・ラフォン2016年はプロ向けの試飲会でも大人気!
テュヌヴァン社が扱うワインの中に、A.O.C.ボルドーのファンテジー・ド・ラフォンがあります。
オーナーはヴァランドローをはじめ、オーゾンヌ、パヴィ等有名シャトーのコンサルタントをしているポール・マリー・モリヨン氏で、このワインは彼の庭に植えてある桜の木をラベルにしています。
インタビューの中でキャロリーヌさんと盛り上がったのがこのワインのコストパフォーマンスの高さ!ヴィンテージが2016年で落ち着いて素晴らしい状態ながら、小売価格が2,300円(税抜)というボルドーワインはなかなか出会えるものではありません。
果実味がまろやかで豊かでタンニンとのバランスもよく、柔らかい味わいが楽しめます。
驚くべきテュヌヴァン・チームの勤続年数
今回お話を聞いた中で驚いたことの1つが、テュヌヴァン・チームの勤続年数の長さです。
キャロリーヌさんも2000年に留学に来ていた日本からフランスへ渡り、すでに23年従事していますが、同僚である栽培担当者のクリストフ・ラルディエール氏はボルドーのシャトーレイソンからヴァランドローへやってきて20年以上、また醸造担当者のレミ・ダルマッソ氏はすでに勤続25、26年目を迎えているそうです。
テュヌヴァン氏を中心にいい雰囲気で日々ワイン造りに向き合っていることがわかります。
テュヌヴァン氏自身も勉強熱心でディテールにこだわりを持っているそうですが、一緒に働くプロフェッショナルなメンバーを大切に思い、意見を尊重している、そしてその思いがきちんとチームの一人一人に伝わっているのが素晴らしいことだと感じました。
新たな株主を迎えさらに安定した未来へ
2016年から新しい株主として、建築関係の会社を所有するルフェヴェール夫妻が参画しています。
建築の仕事で財を成したルフェヴェール夫妻はワインの知識はないまま、2012年にサンテミリオンのグラン・クリュ・クラッセのシャトー・サンソネを購入しました。
サンソネのコンサルタントをテュヌヴァン氏に依頼したことにより、良好な関係を築いていき、その間に他のシャトーも何社が購入しつつ、2016年にヴァランドローへの投資を決めました。
将来的にはテュヌヴァン夫妻とともにテュヌヴァン社の経営に携わる予定だとのこと。2019年からたった2年で新しい醸造所を建設出来たこともこのルフェヴェール夫妻の功績によるものです。
また2年前から新しいコンピューターシステムを導入し、徹底した在庫管理を行い、新しい倉庫も建設しています。
テュヌヴァン社は次の担い手も得て、ますますその未来は楽しみです。
テュヌヴァンの商品一覧